第4章 二項分布

こんにちは。后稷です。

統計学には多くの種類の分布が登場します。其の代表例としては、正規分布、対数正規分布、カイ二乗分布、F分布、そして二項分布、などが挙げられます。本章の主題である二項分布は、数多くある分布の中で、最も基礎的かつ最初に学ぶべき分布であると思われます。

二項分布の仕組みは実に単純であり、其の理解に難解な公式は全く必要ありません。また二項分布は日常生活での意思決定に容易に活用できます。日々の生活で行う意思決定の質の向上のため、そしてより高度な分布の学習に備えた足掛かりのために、二項分布について以下の動画にて簡潔にお話し致しました。

第3章の目次
ベルヌーイ試行
二項分布
多項分布
本日の終わりに


ベルヌーイ試行

本章の主題である二項分布は、複数のベルヌーイ試行の集合体です。よって本節では、二項分布の構成要素としてのベルヌーイ試行についてお話しします。

ベルヌーイ試行とは、発生し得る結果が2択であるランダムな試行です。結果が2択、即ち有限なので、ベルヌーイ試行の結果は離散型確率変数です。また発生確率は全ての試行において共通であり、一つの試行は別の試行の結果に影響を与えないものとします。

ベルヌーイ試行の身近な例としては、コイン投げ(裏と表)、賽の目(丁と半)、不良品検知(合格と不合格)、などが挙げられます。

ベルヌーイ試行に関する方程式は以下の通りです。

  平均 \(=p_a\)

  分散 \(=p_a\times p_b\)

なおベルヌーイ試行は、スイスの数学者・ヤコブ・ベルヌーイ教授(1654〜1705)が其の名の由来です。

二項分布

ベルヌーイ試行を複数回に渡り繰り返し行い、其の結果の合計値を確率変数Xとする分布が二項分布です。

二項分布に関する方程式は以下の通りです。

  平均 \(=n\times p_a\)

  分散 \(=n\times p_a\times p_b\)

  発生確率 \(=(p_a^{r_a}\times p_b^{r_b})\times({}_nC_{r_a}\times{}_{n-r_a}C_{r_b})\)

MS社の表計算ソフトExcelでは、確率質量関数及び累積分布関数は、それぞれ関数BINOM.DIST(発生回数,試行回数,ベルヌーイ試行での発生確率,false)とBINOM.DIST(発生回数,試行回数,ベルヌーイ試行での発生確率,true)にて計算されます。なおBINOM DISTはBinomial Distributionの略語であり、其の和訳は二項分布です。

多項分布

二項分布の学習の後には、其の延長線上にある多項分布は理解は容易です。好い機会ですので、多項分布に関してもお話し致します。

多項分布とは、其の名前が示す通りに、複数の結果が発生可能な試行を反復して行なった際の分布を指します。単数の対義語である複数は、2以上の数値の意味です。よって二項分布は多項分布の一形態です。しかしながら世間一般的には、結果の種類数が3を超えた時に、当該分布は多項分布と呼ばれます。

多項分布の卑近な例としては、天気予報(晴天・雨天・曇天の3通り)や賽の目(1〜6の6通り)などが挙げられます。

多項分布に関する方程式は以下の通りです。

  平均 \(=n\times p_a\)

  分散 \(=n\times p_a\times (1-p_a)\)

  発生確率 \(=(p_a^{r_a}\times p_b^{r_b}\times p_c^{r_c}\times・・・)\)
         \(\times\,({}_nC_{r_a}\times{}_{n-{r_a}}C_{r_b}\times{}_{n-{r_a}-{r_b}}C_{r_c}\times・・・)\)

なお「・・・」は、同様の計算を残る全ての試行結果にて繰り返す、の意です。

本日の終わりに

本日は、主たる内容として、二項分布に関してお話し致しました。コインやサイコロなどを使った勝負事、品質検査、政党支持率、株価の値動き、等々、多くの事象は2択で表現できます。二項分布の知識を活用することで、より合理的な意思決定が可能になると期待されます。

また二項分布の発展型である多項分布の知識を活用すれば、選択肢が多い複雑な場面においても迷うことなく、十分に対応できます。

次章では、微分法と積分法に関してお話しする予定です。お目汚し失礼致しました。近い将来に、またお逢いできたら幸いです。

怱々不一
有栖川后稷


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