こんにちは。后稷です。
統計学の学習を効率的かつ効果的に進める為には、微分法と積分法を避けて通る事はできません。何故ならば、後程に日を改めてお話ししますが、事象の発生確率は、とある図形の面積として示され、当該面積の計算には、積分法が用いられるからです。
本格的な確率計算の準備段階として、微分法と積分法の仕組み、計算例を、簡潔にお話し致しました。
数列と極限値
本章の主題である微分法と積分法の学習には、数列及び極限値の理解が前提となります。其のため、微積の前に、まずはこれら二つに関してお話しします。
数列とは、其の名の通りに、並べられた数字の列です。其の並べ方には、規則性がある場合と無い場合とがあります。
無規則の数列とは、其の名前が示す様に、何の規則もなく、無作為に選ばれた数値の列です。例として、MS Excelにて、0から20までの範囲にて乱数を並べると、この様な数列になりました。
無規則の数列:
9・7・2・8・20・5・17・1・15・0・7・・
規則性のある数列の代表例として、等差数列、等比数列、フィボナッチ数列、などが挙げられます。
等差数列は、隣り合う数値の差異が一定の数列です。当該差異は、特に、公差と呼ばれています。等比数列は、隣り合う数値の比率が一定の数列です。当該比率は、公比と呼ばれます。また直前の二つの数値の合計が次の値となる数列は、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチ氏の名前から、フィボナッチ数列と呼ばれています。当該数列は、芸術や美術の分野で有名な、黄金比率(Golden Ratio)の根拠とされています。黄金比率は1対\(\frac{1+√5}{2}\)(≒1.61803・・・)です。
等差数列(公差2):
1・3・5・7・9・11・13・15・17・19・・・
等比数列(公比3):
1・3・9・27・81・243・729・2187・・・
フィボナッチ数列:
1・1・2・3・5・8・13・21・34・55・・・
数列が際限なく永遠に続く時に、最終的な目標となる数値は極限値と呼ばれます。永遠に続く数列に終わりはありませんので、極限値は到達できる数値ではありません。永遠に近づき続ける目標値と言えます。
極限値は英語でLimitです。よって数学的には、以下の様に表現されます。limの下部にある「\(x\rightarrow a\)」は、xが少しずつaに近づいて行く、の意味です。aには任意の数値が代入されます。
\(\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=極限値\)
なお、xが際限無く増加し、折れ線グラフの曲線がX軸を永遠に右方向に伸びる場合には、「\(x\rightarrow\infty\)」と表現されます。
微分法
本章の主題の一つである、微分法に関してお話しします。
微分法は、とある関数の傾きを示す、別の関数の算出に用いられます。例として、此処に関数Aがあるとします。この関数Aを微分し、新たに関数Bを算出します。当該関数Bは、関数Aの、任意の地点における、傾きを示します。
なお傾きは、誰しもが中学ニ年生の時分に学んだ、一次関数 y=ax+bにおけるaです。其の値は、xの変化に対してyが反応する度合いであり、xの変化1に対するYの変化を示します。また変化量を意味する符牒として、広く一般的に、ギリシャ文字のデルタが用いられます。デルタは、Δやδなどと書きます。
\(傾きa=\frac{y変化量\,\,\,\,}{x変化量\,\,\,\,}=\frac{\Delta x}{\Delta y}\)
当該方程式では、一次関数y=ax+bが描く直線に限り、正確な傾きが計算されます。真っ直ぐに長く伸びた直線では、傾きの値は、直線のどの部分でも一定です。また\(\Delta x\)の値に関わらず、仮に、1や3、100や1000などの数字であっても、\(\Delta y\)が正しく対応してさえいれば、常に正確な傾きが計算されます。
しかしながら、関数が曲線を描く場合には、其の限りではありません。例えば、二次関数や三次関数の様に、大きな弧を持つ曲線では、測定の場所ごとに、傾きの値は異なります。また\(\Delta x\)の値の大小は、たとえ其れに\(\Delta y\)を適切に対応させたとしても、傾きの値に影響を与えます。其のため、\(\frac{\Delta x}{\Delta y}\)では、正しい傾きは計算されません。この様な場面で、微分法が用いられます。
微分法による傾き計算では、xの変化量、即ち\(\Delta x\)は、限りなくゼロに近い数字を前提とします。其の値とは、先に極限値の件で確認した、xが永遠に増加する時の\(\frac{1}{x}\)、つまり\(\frac{1}{\infty}\)です。この値は、無限小と呼ばれています。これから具体的な数値を用いてお話ししますが、\(\Delta x\)に代入する数値が小さければ小さい程に、計算される傾きは、より正確になります。
また、微分積分学においては、方程式は、これ迄の「y=」に換えて、「f(x)=」にて表現されます。英文字fは、関数の英訳であるFunctionの頭文字です。括弧内にあるxは、関数の独立変数がxである状況を示します。よってf(x)は、「独立変数xの関数f」の意味です。yとf(x)の違いは、単に用いる記号の変更であり、其の内容に違いはありません。
また、微分法の適用は、数式\(\frac{d}{dx}\)で表現されます。先に見た関数Aと関数Bの関係は、方程式\(\frac{d}{dx}\) 関数A = 関数Bにより、関数Aを微分すると関数Bになる状況が示されます。
微分の計算に用いる方程式は、以下の通りです。定義による厳密な方程式は計算の根拠を示します。また実用的な方程式は、より迅速かつ簡単な計算を可能とします。何方の方法であっても、結果に違いはありません。
微分の方程式
・厳密:\(\frac{d}{dx}f(x)=\displaystyle\lim_{\Delta x\to 0}\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}\)
・実用:\(\frac{d}{dx}x^n=nx^{n-1}\)
微分法を用いた傾きの計算方法は、動画にて詳しく解説しております。
積分法
さて、本章の二つ目の主題である、積分法に関してお話し致します。
積分法は、とある関数とX軸とに囲まれた部分の面積の計算に用いられます。例として、此処に関数Aがあるとします。この関数Aを積分することで、新たに関数Bが算出されます。当該関数Bは、関数AとX軸に囲まれている部分の面積を示します。
積分は微分の正反対の流れとなります。簡潔に申せば、微分後の関数を、微分前の状態に戻す行為が積分です。微分と積分の順番を変えても同様です。積分後の関数は、微分することで、積分前の状態に戻ります。
積分法の適応は、\(\int\)(インテグラル)とdxで表現されます。先に見た関数Aと関数Bの関係は、\(\int_a^b 関数A\ dx =[関数B]_a^b\)により、関数Aを積分すると関数Bになる状況が示されます。なおインテグラルに附されている小文字のa及びbは、面積計算における、x軸の範囲を示します。
また、微分の時と同様に、積分法においても、xの変化量、即ち\(\Delta x\)は、無限小であるとの前提が敷かれます。
積分法の計算に用いる方程式は、以下の通りです。
積分の方程式
・\(\int_a^b x^n dx = \left[\frac{1}{n+1}x^{n+1}\right]_a^b\)
繰り返しますが、微分と積分は正反対の行為です。よって、\(x^n\)を積分すると\(\frac{1}{n+1}x^{n+1}\)になり、\(\frac{1}{n+1}x^{n+1}\)を微分すると\(x^n\)に戻ります。
積分法を用いた面積の計算方法は、動画にて詳しく解説しております。
積分定数C
先程に、微分後の関数を積分すると、微分前の状態に戻ると申しました。しかしこれには、一つの例外があります。Xを含まない項に関しては、この限りではありません。
Xを含まない項とは、言い換えれば、\(x^0\)が附されている項です。なお、\(x^0\)は1です。\(x^0\)を微分すると、ゼロの掛け算ですから、ゼロとなります。ゼロの積分も同様です。よって、xが附されていない項を微分し、その後に積分しても、当該項は回復しません。
しかしながら、たとえ項が回復しないといえど、当該項をゼロと表現してはいけません。何故なら、微分前の数値は、必ずしもゼロではなく、何かしらの数値であった可能性があるからです。
この様な場面で、xを含まない項の存在は、英文字のCで示されます。Cは、定数を示す英単語である、Constantの頭文字です。
例として、\(x^5+3\)を微分し、その後、直ちに、積分してみましょう。
\(x^5+3\rightarrow 5x^4+0\)
\(x^5+C\leftarrow 5x^4+0\)
微分と積分は正反対の行為です。よって、微分後の関数を積分すると、微分前の状態に戻る筈です。確かに、\(5x^4\)は、元通りに、\(x^5\)に戻ります。しかし0は、積分後も、ゼロの掛け算となり、変わらずゼロのままです。こうして、微分前には存在した3が回復しないこととなります。
しかし、たとえ3が回復しないからといって、其れを無視してはなりません。よって、3に替えて、何かしらの数値が存在した形跡を示す必要があります。其の為に用いられる記号が、件の、積分定数Cとなります。Cは、定数を意味する英単語、Constantの頭文字です。
学校や資格などの試験において、積分定数Cを失念すると、減点の対象となります。最後まで気を抜かずに、しっかりと、Cを書く様に心掛けましょう。しかしながら、しかし統計学の確率計算においては、特段に意識する必要はありません。
本日の終わりに
多くの人が高校時代に、微分積分学を学んだと思われます。往年には「この微分法と積分法とやらは、一体、人生でナンの役に立つのだろう」などと嘆いた人も多いのではないでしょうか。確率の計算には、これらの、特に積分法の、理解が欠かせません。これらに関する理解の有無は、意思決定の質に関して、雲泥の差を産むと思われます。
次回の動画では、棒グラフや折れ線グラフなどを描きながら、実際に、図形の面積と発生確率の関連性についてお話しする予定です。お目汚し失礼致しました。近い将来に、またお逢いできたら幸いです。
怱々不一
有栖川后稷